最終更新日:2026-09-14
税理士事務所M&Aの仲介手数料、仲介会社によって異なる理由
一般的なM&Aの解説記事を読むと、仲介手数料は「レーマン方式で◯%」という説明で終わっていることが多いです。ところが実際に複数の仲介会社に見積もりを取ってみると、提示される金額感がバラバラで戸惑うことがあります。この記事では、なぜそうなるのかを整理します。
レーマン方式は、取引金額が大きいほど料率が下がる
多くのM&A仲介会社が基準として掲げているのが、取引金額に応じて手数料率が段階的に下がる「レーマン方式」です(税理士事務所M&Aで関係しやすい範囲だけを抜粋しています。実際の表はより上の金額帯まで続きます)。
| 取引金額の区分 | その区分にかかる手数料率の目安 |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超〜10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超〜50億円以下の部分 | 3% |
ここで注意したいのは、該当する区分の料率を全額に一律で掛けるのではなく、区分ごとに金額を分けて、それぞれの料率を掛けて合算するという計算方法です。例えば取引金額が6億円なら、「5億円×5%+1億円×4%」という計算になり、6億円全額に4%を掛けるわけではありません。
小規模案件では、最低手数料が適用されやすい
M&Aを1件成立させるのにかかる作業量(事務所の中身を調べる、価格を交渉する、最終契約の内容を調整する等)は、取引金額に比例して減るわけではありません。税理士事務所のM&Aのように、取引金額が数千万円規模の案件にレーマン方式をそのまま当てはめると、手数料が仲介会社側の実際の作業コストに見合わなくなります。
そのため、多くの仲介会社では、レーマン方式で計算した金額が一定の水準を下回る場合に「最低手数料」を適用する仕組みを採っています。取引金額が小さいほど、この最低手数料が適用されやすくなります。
同じレーマン方式でも、最低手数料と報酬基準額が違う
同じ言葉を使っていても、契約前に確認しておきたい点がいくつかあります。
- 最低手数料の金額:仲介会社ごとに設定が異なります。最低手数料が適用される案件では、実質的な手数料率がレーマン方式の表面上の%よりもかなり高くなることがあります
- 料率を掛ける対象(報酬基準額):株式価額なのか、譲渡代金(オーナーの受取額)なのか、負債等も含めた企業価値・移動総資産価額なのか。算定のベースとなる金額の定義自体が会社によって違うことがあり、同じ料率でも基準額が違えば手数料の金額は変わります
- レーマン方式を採用していない場合もある:定額制、着手金の有無、成功報酬のみなど、そもそもレーマン方式によらない料金体系を採る仲介会社もあります
片手取りか、両手取りか
両手取りは、同じ1つの取引について、仲介会社が売り手・買い手の両方から手数料を受け取る形です。ここで注意したいのは、「仲介会社が双方に対して中立・公平であること」自体は、中小M&Aガイドラインでもむしろ求められている対応だという点です。問題視されているのは中立であることそのものではなく、双方と契約して仲介する構造そのものに、両者の利害が一致しない局面を扱う難しさがあり、特に双方から報酬を受け取る場合には、成約を急ぐインセンティブや一方への便宜が価格・条件の形成に影響してしまうリスクがあるという点です。この問題は、片方の手数料だけを課さない契約にしていても、双方と契約している以上、完全には解消しません。中小M&Aガイドラインは、仲介者に対して、双方と契約を結んでいること、双方から手数料を受け取る場合はその旨、相手方の手数料の算定基準等を、契約前にきちんと説明するよう求めています。
なお、「片手取り・両手取り」という手数料をどちらから受け取るかの話と、「仲介・FA」という双方と契約するか、一方とだけ契約するかの話は、似ていますが別の軸です。
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)とは、売り手・買い手のどちらか一方とだけ契約し、その依頼者の利益を優先して、価格交渉や契約条件の交渉を代理する専門家です。仲介が双方の間に立って中立的に調整するのに対し、FAは依頼者側の立場に立って交渉を進めます。仲介(双方と契約する類型)であっても、一方に手数料を課さない、または手数料を免除しているケースもあり得ます。この場合も、仲介者は双方との契約関係にあることに変わりはないため、片手取りだからFAだと理解しないよう注意が必要です。
片手取りか両手取りか、仲介かFAかは、契約前に交付される書面の説明から確認すべきです。説明が曖昧な場合は、書面での説明を求めることをおすすめします。
見積もりを比較する際に確認したいこと
手数料の金額・構造について(仲介・FAどちらの場合でも確認したいこと)
- 最低手数料は設定されているか。設定されている場合、自分の案件の取引金額でシミュレーションすると実質的な手数料率は何%になるか
- 料率を掛ける対象(報酬基準額)は何か(株式価額か、譲渡代金か、企業価値ベースか等)
- 着手金・月額顧問料など、成功報酬以外の費用は発生するか
契約上の立場について
- 片手取りか両手取りか
- 双方と契約する仲介なのか、自社のみと契約するFAなのか
「レーマン方式で5%」という一般的なイメージだけで臨むと、実際の見積もりを見たときに戸惑うことになります。複数の仲介会社を比較する際は、表面上の料率ではなく、自分の案件の金額に当てはめた実質的な負担額で比べることをおすすめします。
まとめ
- レーマン方式は取引金額が小さいほど手数料が薄くなり、実務上は最低手数料が適用されやすくなる
- 最低手数料の金額、料率を掛ける対象(報酬基準額)、片手取りか両手取りかは、仲介会社や個別の契約によって異なる
- 見積もりを比較する際は、表面上の料率ではなく、自分の案件の金額に当てはめた実質的な負担額で比較する
監修
税理士事務所承継ラボ編集部(公認会計士・税理士)